10月 2023

赤毛のレドメイン家

 イーデン・フィルポッツの推理小説。江戸川乱歩が激賞したことで有名。自分も江戸川乱歩経由で知った。

休暇中の凄腕刑事のもとに殺人事件が発生。当事者から助けを求められて参戦すると、先日すれ違った素敵な女性が依頼者だった、という始まり。事件自体は犯人も被害者も割れているが、どちらも発見できずにいるうちに第2の事件が起こり、という筋書き。

乱歩風に行くと、最初の謎の提示については、状況は明確に見えるが、犯人も被害者も見つからない、特に犯人は赤毛に派手な服で、人目につくはずなのに、という点になると思う。これ自体はスタンダードで、特にプラスマイナスはない。

次の中盤のサスペンスについては、犯人が急に姿を見せたり、刑事から女性への恋慕があったりとなかなか面白い。ただ犯人がずっと同じ、目立つ服装そのままという点はさすがにちょっと不自然なのではないかなと。またそれも幽霊かもみたいな印象も持たせられるのでいいのかもしれない。場面がイギリスからイタリアへ移り、描写も細かいのはいい点。

最後のなぞ解きについては、別の探偵が後から事件をなぞり、真相に気づく。トリックはミステリになれた人なら気が付けるかなと思うくらいの意外性だが、別に悪くはないと思う。

総じて面白い話と思うが、探偵役や警察の捜査が雑すぎる気がする。いずれも死体が見つからないとなっているが、現場近くに数フィートの穴を掘って埋めていたり、潮の引いたときに海岸に埋めていたり、そんなの警察がちゃんと調べればわかるでしょという気がしてしまう。そこで見つかってしまうと元も子もないトリックなので、どうしても浅く見える。それでいて、犯人は天才的犯罪者気取りなのが、正直滑稽なレベルに見える。刑事も独断専行して犯人を捕らえる機会を逸したり、好きになってしまった女性の言動の裏付けも取らず信じていたり、総じて甘い。あとから出てくる探偵役にも、犯人役にもそうとう馬鹿にされるが、致し方ないかと。

あと最後に犯人の手記という形で細部が補完されるが、どうせなら女性側の視点も欲しかった。今回は男女ペアでの計画だが、どちらかというと犯罪者として優秀なのは女性の方なので。この女性の悪女ぶり、演技力は素晴らしく、名犯人をランク付けするとすれば自分の中でかなり上位に来ると思う。

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